東京/ジュネーブ 2026年10月29日 ― 非営利の医薬品研究開発組織であるDrugs for Neglected Diseases initiative(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ:DNDi)は、長崎大学、英国ダンディー大学、およびエーザイ株式会社(以下、エーザイ)との共同研究に対し、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund:ジーヒット・ファンド)から新たに約9,900万円(約60万ユーロ)の助成が決定したことをお知らせします。本プロジェクトは、創薬の初期段階で有望な候補化合物をより高い精度で見極めることで、シャーガス病治療薬の開発成功率の向上を目指します。
シャーガス病は顧みられない熱帯病(NTDs)の一つで、中南米を中心に推定800万人が罹患しているとされています。本疾患は感染から何年もの潜伏期間が経過した後に重篤な心疾患を引き起こす可能性があり、治療しなければ命に関わることもあります。現在利用可能な治療薬は存在するものの、治療期間が長く、副作用も少なくないため、治療継続が難しいという課題があります。また、これら既存の治療薬は、慢性期に症状を呈した患者に対する有効性が十分に示されていません。そのため、より安全で効果的かつ患者負担の少ない、慢性期の有症状患者にも有効な治療薬の開発が喫緊の課題となっています。
シャーガス病創薬における大きな課題の一つは、病原体である寄生虫を完全に排除できる化合物を創薬の初期段階で見極めることです。標準的な初期試験で有望と判断された薬剤候補の多くが、その後の開発段階で寄生虫を完全に排除できないことが判明し、開発に失敗しています。この高い脱落率は開発コストの増大を招き、より良い治療法を患者に届けるまでの時間を長引かせる要因となっています。
GHIT Fundが支援する本プロジェクトは、寄生虫を体内から完全に排除できる可能性のある化合物をより確実に特定するための革新的な手法やアプローチを開発し、シャーガス病治療薬の開発成功率の向上を目指しています。創薬プロセスのより早い段階で最も有望な薬剤候補を選定できるようにすることで、シャーガス病治療薬開発全体の効率を高め、新たな治療法の実現を後押しします。
本プロジェクトにおいて鍵となる革新性の一つは、従来の手法では検出できない可能性があるごく少数の生存寄生虫を検出できる高感度な評価手法の開発にあります。これらの手法により、薬剤候補が寄生虫を完全に排除できる可能性をより早く、より正確に評価できるようになり、開発後期段階での高コストな開発中止リスクの低減につながると考えられます。また、本プロジェクトでは化合物ライブラリのスクリーニングも実施し、新たに開発される高感度な評価手法を用いて、得られたヒット化合物を評価します。これにより、シャーガス病の原因寄生虫であるクルーズトリパノソーマ(T. cruzi)を標的とする、新たな有望な化合物群の特定を目指します。
本プロジェクトは長崎大学が主導し、ハイスループットスクリーニング法の開発およびヒット化合物の作用メカニズムの解明を担当します。ダンディー大学は、寄生虫が完全に排除されたかどうかを評価するための先進的な画像解析技術を用いた評価手法の開発・活用を担当します。エーザイは大規模な化合物ライブラリを提供するとともに、これらの評価を支援します。DNDiはプロジェクト全体の調整を担い、参照化合物の提供や戦略的な助言を通じて、シャーガス病研究を前進させ、世界中の研究者に役立つ信頼性の高い研究ツールの開発を支援します。
本プロジェクトで開発されるツールおよび手法は、世界中の研究者が活用できるよう広く共有される予定です。これにより、シャーガス病治療薬の開発成功率向上、当分野におけるイノベーションの加速、そして患者が利用できる治療選択肢の拡大に貢献します。
シャーガス病およびDNDiの取り組みに関する詳細は、こちらをご覧ください。シャーガス病 | DNDi Japan
DNDi について
Drugs for Neglected Diseases initiative(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ:DNDi)は、顧みられない人びとに、安全で有効、かつ手頃な価格の治療法を届けることを目的とした非営利の医薬品研究開発組織です。DNDiは、アフリカ睡眠病(別名ヒト・アフリカトリパノソーマ症)、リーシュマニア症、シャーガス病、寄生虫疾患、マイセトーマ(菌腫)、デング熱、クリプトコッカス髄膜炎、C型肝炎、および将来的にパンデミックを引き起こすおそれのあるウイルス感染症に対する医薬品の研究開発を行っています。また、子どもの健康、ジェンダーの公平性や性差に配慮した研究開発、気候変動の影響を受ける疾患への対応を研究開発上の優先事項としています。2003年の設立以来、DNDiは世界中の官民パートナーと協力し、6つの致命的な疾患に対する17種類の新たな治療薬・治療法を提供し、数百万人の命を救ってきました。
dndi.org|dndijapan.org
【本プレスリリースに関するお問い合わせ】
DNDi Japan 広報担当 野田 葉子
ynoda@dndi.org/ 電話: 070-4465-5453