医療活動の最前線で誕生
世界では毎年、何百万人もの人びとが適切な治療がないために命を落としています。しかし、世界の医薬品研究開発のうち、貧困層や社会的弱者に影響を与える疾患に焦点を当てているのはごく一部にすぎません。
1990年代後半、低中所得国の現場で医療活動に従事していた国境なき医師団(MSF)のチームは、顧みられない熱帯病(NTDs)を始めとする、顧みられない病気に苦しむ患者を治療できないことに苛立ちを募らせていました。患者の治療に使用する医薬品の効果がなかったり、強い副作用があったり、あるいは製造中止になって使用ができないなどの問題があったためです。
そこでMSFは、1999年に受賞したノーベル平和賞の賞金の一部を、顧みられない病気に対する治療薬の研究開発 (R&D) に取り組むための革新的な組織の設立に充てることを決定しました。
2003年、DNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative:顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)は、MSF、世界保健機関の熱帯病医学特別研究訓練プログラム(WHO-TDR)、オズワルド・クルス財団(ブラジル)、インド医学研究評議会(インド)、ケニア中央医学研究所(ケニア)、マレーシア保健省(マレーシア)、パスツール研究所(フランス)によって、スイス・ジュネーブに本部を置く非営利財団として設立されました。
以来、DNDiは世界中の顧みられない病気で苦しむ人びとのために、安価で患者に優しい新たな治療薬・治療法を発見、開発、提供しており、それらにより多くの命が救われています。
「私たちが1999年にノーベル平和賞を受賞したとき、MSFには救命活動に必要な医薬品がありませんでした。そこで私たちは、受け取った資金の一部を、全く新しいモデルの研究開発の立ち上げに充てることにしました。その4年後、DNDiは誕生しました」
元MSFフランス事務局長、前DNDiエグゼクティブ・ディレクター
ベルナール・ペクール医師
DNDiはスイスのジュネーブに本部を置き、ブラジル、インド、南アフリカ(GARDPとの合同オフィス)、ケニア、コンゴ民主共和国、マレーシア、米国、日本の8カ国に地域オフィスがあります。
DNDiスタッフの半数は地域オフィスに所属し、各地域での臨床試験の管理監督、保健省や国家疾病対策プログラムの支援、患者と臨床医および研究者との連携強化、そして活動資金の調達などの活動を行っています。
私たちの取り組み
利益よりも患者を優先
DNDiは、世界中の200を超えるパートナーによる「仮想オーケストラ」の指揮者的な役割を果たし、利益追求ではない患者のための治療薬・治療法を開発しています。公的機関、民間企業、学術機関、非営利団体、慈善団体らパートナーシップを結び、各パートナーの独自の専門知識を活用して、顧みられない病気で苦しむ人びとのためのイノベーションを推進しています。