- 初期および後期のガンビア型*(最も一般的な病型)アフリカ睡眠病において、投与後18カ月時点で最大96%の治療成功率を示した第II/III相臨床試験の結果に基づく勧告
- 3錠を一度服用するだけという、複雑で長期にわたる既存治療に代わる簡便な選択肢を提供し、世界保健機関(WHO)が掲げる2030年までの制圧目標を後押し
- サノフィ社は自社の慈善活動団体「サノフィ・コレクティブ財団」を通じ、同薬をWHOへ無償提供予定
* ガンビア・トリパノソーマ症 (Trypanosoma brucei gambiense); 西アフリカおよび中央アフリカで見られる最も一般的なアフリカ睡眠病の病型
欧州医薬品庁(EMA)のヒト用医薬品委員会(CHMP)は、成人、および12歳以上かつ体重40kg以上の患者における、ガンビア型アフリカ睡眠病の初期および後期の両ステージに対する単回経口治療薬として、アコジボロール・ウィンスロップ(以下、アコジボロール)に肯定的見解を示しました。
EU-M4all(EU-Medicines for allの略。欧州連合(EU)域外の国々における承認を目的とした医薬品に適用される制度)を通じて示されたCHMPの肯定的見解は、アコジボロールが EU 基準を満たしていることを裏付けるものです。この制度にはWHO の疾病専門家や蔓延国の規制当局が関与しており、従来十分な治療法がなく、深刻な医療ニーズのある疾病を対象として適用されます。今回の決定は、主要な蔓延国であるコンゴ民主共和国(DRC)での新薬アコジボロールの承認を後押しするとともに、WHOが進めるアフリカ睡眠病治療ガイドライン改訂に向けた重要な基盤を築くものです。これにより最終的には、中央・西アフリカの蔓延国全域で、本薬がより広く利用可能となることが期待されます。
DNDi とサノフィ社が共同開発したアコジボロールは、蔓延国で承認されれば、現行治療から大きく前進する可能性があります。既存の治療では、10日間の服用、進行例では注射剤と経口薬の併用が必要とされています。
「わずか20年の間に、深刻な副作用を伴うヒ素系の複雑な治療から、一度の服用で安全に患者を治療できる時代に到達しました」とDNDi代表のルイス・ピサロ医師は述べています。「この進展は、協働による科学の力を示すものであり、過去1世紀にわたりアフリカで数百万人の命を奪ってきたアフリカ睡眠病の制圧に、私たちが確実に近づいていることを示しています。」
アフリカ睡眠病(別名ヒト・アフリカ・トリパノソーマ症)は、トリパノソーマ原虫(トリパノソーマ属の寄生虫)に感染したツェツェバエに刺されることで伝播し、治療しなければほぼ確実に死に至ります。初期には頭痛や発熱がみられ、後期になると寄生虫が血液脳関門を突破して中枢神経系に侵入し、けいれん、睡眠障害、攻撃的行動、混乱、昏迷といった行動異常、認知障害、神経症状を引き起こします。
DNDi は DRC とギニアで、国家アフリカ睡眠病対策プログラムと連携して第II/III相臨床試験を実施し、サノフィ社が承認申請を行いました。CHMP の肯定的見解は、DNDiおよびパートナーから提供された臨床・非臨床データに基づいており、第II/III相臨床試験(Lancet Infectious Diseases誌に掲載)では、初期・後期いずれのステージでも、投与後18カ月時点で最大96%の治療成功率と良好な安全性プロファイルが示されました。
「アコジボロールの開発と今回の肯定的な科学的見解は、アフリカ主導による科学が大きな成果を収めたことを示しています。これは、アフリカ大陸の最も遠隔かつ往来が難しい地域で、最先端の医薬研究を進めてきたアフリカの医師や研究者たちのたゆまぬ努力の結晶です」と、DRCの国家アフリカ睡眠病対策プログラム・ディレクター、エリック・ミアカ医師は述べています。
1998年には、ガンビア型アフリカ睡眠病の報告症例は約4万人に上り、推計30万人の未診断例が存在しました。当時、後期患者に使用できた唯一の治療は、深刻な副作用を伴うヒ素系の注射剤でした。その後20年以上にわたる研究開発への投資により、2009年にニフルチモックス・エフロルニチン併用療法(NECT)、2018年に初の経口薬フェキシニダゾールが開発され、治療は大きく改善しました。2024年には報告症例は600人未満にまで減少しています。
サノフィ社のコーポレートアフェアーズ担当エグゼクティブバイスプレジデント、オードリー・デュバル氏は次のように述べています。「サノフィは何十年にもわたり、DNDi、WHO、そしてさまざまなパートナーとともにアフリカ睡眠病の制圧に向けた取り組みを牽引し、最も長く成功を収めてきた官民連携の一つを築いてきました。2001年以降、症例数を98%も減少させるという歴史的成果を達成できたのは、患者を中心に据えながら、真に必要とされる領域でのイノベーションに対し投資を進めてきたからにほかなりません。アコジボロールの登場は、こうした取り組みを新たな段階へと押し上げ、2030年までのガンビア型アフリカ睡眠病制圧に向けて大きな前進をもたらす画期的な成果です。」
サノフィ社は、慈善活動団体「サノフィ・コレクティブ財団」を通じて、アコジボロールをWHO に無償提供します。これにより本治療薬は患者に無料で届けられる予定です。
さらにDRC とギニアで、1歳~14歳の小児におけるアコジボロール使用を評価する追加試験も進行中です。
アコジボロール開発に関する DNDiの取り組みについて
アコジボロールの開発に関する DNDi の取り組みは、以下の組織および個人からの資金支援により実施されました:
- ドイツ連邦研究・技術・宇宙省(BMFTR)/ドイツ復興金融公庫(KfW)を通じて
- BBVA 財団/「フロンティアーズ・オブ・ナレッジ賞〈開発協力部門〉」を通じて
- オランダ外務省国際協力局(DGIS)
- 欧州連合(EU)の支援による「第2期欧州・開発途上国臨床試験プログラム(EDCTP2)」
- グローバルヘルス・第3期欧州・開発途上国臨床試験プログラム(Global Health EDCTP3)および同プログラム加盟国
- ゲイツ財団
- 国境なき医師団(MSF)インターナショナル
- ノルウェー開発協力局(Norad)、ノルウェー外務省(EDCTP2 へのインカインド支援の一部として)
- スイス開発協力局(SDC)
- スイス連邦教育・研究・イノベーション庁(SERI)
- スタヴロス・ニアルコス財団
- スペイン国際開発協力庁(AECID)
- 英国政府・国際開発
- その他の民間財団および個人寄付者
DNDi のアフリカ睡眠病プログラムについて
アコジボロールは、DNDi がアフリカ睡眠病の新しい治療薬候補を絞り込む初期研究(リード最適化)の段階から開発してきた、同疾病治療で初めて、1回の服用で治療効果が期待できる新規化合物です。出発点となった初期ヒット化合物は、Anacor Pharmaceuticals社(2016年にファイザー社が買収)の化合物ライブラリーから見つかったもので、サイネクシス社と米ペース大学によって構造最適化が進められました。その後、開発候補として選ばれ、フランス、英国、マレーシアで実施された第I相臨床試験(安全性試験)で良好な結果が得られました。
アコジボロールは、DNDi、サノフィ社、そして多くのパートナーによる 20年以上にわたる科学的努力と協働の結晶です。2009年には2種の既存薬剤の併用による NECT療法を開発しました。同療法は高い有効性と安全性を示しました。薬剤は、サノフィ社とバイエル社によってWHO を通じ蔓延国に無償提供され、アフリカ睡眠病治療の大きな前進となりました。
2018年にはガンビア型アフリカ睡眠病に対する初の経口治療薬フェキシニダゾールを開発しました。同治療薬は、現在すべての蔓延国で使用されています。
アコジボロールは1回の服用で治療が完了するため、これまで必要だった入院や自宅での厳格な治療管理が不要となる可能性があります。そのため、アフリカ睡眠病の制圧をさらに前進させる画期的な治療として期待されています。
DNDi について
Drugs for Neglected Diseases initiative(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ:DNDi)は、顧みられない人びとのために、安全で効果的、かつ安価な治療薬・治療法を発見、開発し、提供する非営利の研究開発組織です。DNDiは、アフリカ睡眠病 (別名ヒト・アフリカ・トリパノソーマ症)、リーシュマニア症、シャーガス病、河川盲目症(別名オンコセルカ症)、マイセトーマ(菌腫)、デング熱、小児HIV、クリプトコッカス髄膜炎、C型肝炎に対する医薬品を開発しています。また、子供の健康、ジェンダー平等、性差の考慮、気候変動の影響を受ける病気などを研究開発上の優先事項としています。2003年の設立以来、DNDiは世界中の産官学パートナーと協力し、14種類の新しい治療薬・治療法を提供し、数百万人の命を救ってきました。アコジボロールはDNDiが開発した14番目の新しい治療薬です。www.dndi.org|www.dndijapan.org
サノフィについて
サノフィは、研究開発型のAIを活用したバイオ医薬品企業であり、人々の暮らしをより良くし、力強い成長をもたらすことに尽力しています。免疫科学領域の深い知見を活かし、世界中の何百万人もの人々の治療と予防を行う医薬品やワクチンを提供し、さらなる貢献のために革新的なパイプラインの構築にも注力しています。「人々の暮らしをより良くするため、科学のもたらす奇跡を追求する」という使命のもと、医療・環境・社会が抱える課題に真摯に向き合い、社員と国や地域社会にとって前向きな変化を生み 出すことを目指しています。
サノフィは、ユーロネクスト(EURONEXT: SAN)とナスダック(NASDAQ: SNY)に上場しています。
Photo credit: Brent Stirton/Getty Images for DNDi