
東京/ジュネーブ – 顧みられない病気に対する新規治療薬・治療法を開発・提供する国際的な非営利の研究開発組織 、DNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative 「顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ」)は、第5回(2025年)「野口英世アフリカ賞(医療活動部門)」を受賞しました。授賞式は、8月22日(金)に東京で開催され、天皇皇后両陛下のご臨席のもと、石破茂内閣総理大臣が主催しました。
同賞は日本政府により創設されたもので、黄熱病の研究中にアフリカで亡くなった医学者、野口英世博士(1876–1928)の功績を称え、彼の精神を受け継ぐ個人・団体に3年に一度贈られます。今般のDNDiの受賞では、特に顧みられない熱帯病の一つであるアフリカ睡眠病(ヒト・アフリカ・トリパノソーマ症)に対する新規治療薬の開発と提供における功績が評価されました。
DNDi代表のルイス・ピサロ医師は授賞式で次のように述べました。「命を脅かす感染症に立ち向かい、その命をかけて治療法を追い求めた野口博士の献身的な姿勢は、私たちが目指すべき理想であり、深い敬意をもって称えられるべきものです。博士の死後約100年が経った今も、これらの病気の多くは依然として顧みられていません。そして、こうした医療から最も取り残された人びとに最良の治療法を届けるために、22年前、私たちの組織 は設立されました。」
ピサロは、同賞委員会および日本政府への謝意とともに、DNDiと協業する日本の大学や製薬企業の存在に触れました。「日本を含む世界中のパートナーの皆様との連携を通じて、顧みられない病気の制圧という希望が現実味を帯びてきています。これは野口博士が思い描かれた夢の実現に向けた歩みであると確信しています。」
2003年の設立以来、DNDiはリーシュマニア症やシャーガス病などの顧みられない病気に対して13の新たな治療薬・治療法を開発・提供してきました。中でも、アフリカ睡眠病という致命的な病気に対して初めての経口治療薬(飲み薬)を開発できたことは、特筆すべき成果です。
DNDi Japan事務局代表 兼 DNDi事業開発ディレクターの井本大介は次のように述べました。「これらの成果は、産官学のパートナーと資金支援者 の協力があって初めて実現しました。これは、科学の可能性と国際的な連携がもたらす力に他なりません。国際保健や科学を取り巻く環境が不安定さを増す中、野口博士が大切にされた価値観の意義が改めて問われています。」
第5回「野口英世アフリカ賞(医学研究部門)」は、マリ共和国のアブドゥライ・ジムデ博士が、マラリアの治療と撲滅への貢献により受賞しました。過去の受賞者には、ジャン=ジャック・ムエンベ=タムフム博士(コンゴ民主共和国)、ミリアム・K・ウェレ教授(ケニア)、ピーター・ピオット教授(ベルギー)、サリム・S・アブドゥル・カリム博士とカライシャ・アブドゥル・カリム博士(南アフリカ共和国)、カーター・センターのギニア虫症撲滅プログラムなどが含まれます。
DNDiの臨床試験責任者であり、コンゴ民主共和国から来日したウィルフリード・カロンジ・ムトンボ医師は次のように述べました。「この度の受賞を通じて、アフリカを中心に顧みられない熱帯病に苦しむ10億人以上もの人びとに光が当てられたことに、心より感謝申し上げます。こうした患者の存在が忘れ去られることのないよう、私たちは引き続き尽力してまいります。顧みられない病気は、痛みや障害、偏見、そして命をも奪い、人びとに深刻な影響をもたらします。 患者には、より安全で効果的な治療薬が必要であり、その実現には、医療分野における革新が不可欠です。世界的な保健体制が揺らぐ今こそ、医薬品の研究開発への継続的な支援を確保するため、私たちは不断の努力を重ねていく所存です。」
野口英世アフリカ賞は、3年に一度、日本とアフリカで交互に開催されるアフリカ開発会議(TICAD)の機会に合わせて授賞式が行われます。受賞者には、賞状、メダル、そして1億円の賞金が贈られます。
Photo credit: Lameck Ododo-DNDi
DNDiについて
Drugs for Neglected Diseases initiative(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ:DNDi)は、顧みられない人びとのために、安全で効果的、かつ安価な治療薬・治療法を発見、開発し、提供する非営利の研究開発組織です。DNDiは、アフリカ睡眠病 (別名ヒト・アフリカ・トリパノソーマ症)、リーシュマニア症、シャーガス病、河川盲目症(別名オンコセルカ症)、マイセトーマ(菌腫)、デング熱、小児HIV、 HIV患者の重症日和見感染症 、クリプトコッカス髄膜炎、C型肝炎に対する医薬品を開発しています。また、子供の健康、ジェンダー平等、性差の考慮、気候変動の影響を受ける病気などを研究開発上の優先事項としています。2003年の設立以来、DNDiは世界中の産官学パートナーと協力し、13種類の新しい治療薬・治療法を提供し、数百万人の命を救ってきました。www.dndi.org
【本プレスリリースに関するお問い合わせ】
DNDi Japan 広報担当 野田 葉子
ynoda@dndi.org/ 電話: 070-4465-5453