東京/ジェネーブ – 非営利の研究開発組織であるDrugs for Neglected Diseases initiative(DNDi:顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)は、日本のグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)の資金支援の下、長崎大学と共同でシャーガス病の新薬開発を目指して新規化合物のスクリーニングを行うことに合意したことを発表しました。
シャーガス病は、世界中で600万人が罹患している顧みられない寄生虫疾患です。罹患者のおよそ3人に一人は心臓に障害が発生し、進行性の心不全や突然死に至る可能性があります。ラテンアメリカでは、シャーガス病はマラリアを含む寄生虫病の中で、毎年最も多くの命を奪っています。
現在の治療薬は半世紀前に発見されたものであり、効果も十分ではありません。感染後すぐに投与すれば効果はあるものの、最大8週間の投与が必要で、重篤な副作用をもたらすこともあります。より安全かつ簡便で、有効な治療薬が早急に必要とされています。
シャーガス病の新薬の開発において、これまでは最適な化合物評価系の確立が課題でした。長崎大学の研究者らは、細胞ベースの試験系を用いて、化合物の活性をスループットの高い方法で評価できるスクリーニング系を開発しました。この方法ではクルーズ・トリパノソーマというシャーガス病を発症させる寄生虫に発光遺伝子を導入させて検出します。
GHIT Fundの資金支援を受け、長崎大学とDNDiは共同で、この新しい手法により、大阪大学薬学研究科のBINDS事業が提供する化合物ライブラリーをスクリーニングします。長崎大学はハイスループット・スクリーニングの実施とデータ解析ならびにその解釈を行います。DNDiはプロジェクトの開始(推進)、データ解析、ヒット化合物の優先順位付けを支援します。
GHIT Fundは、DNDiが定めるシャーガス病のヒット化合物の判定基準を満たす新規化合物を同定するため、本プロジェクトに約1,600万円(10万ユーロ)の資金支援を決定しました。DNDiは専門人材の関与を通じ本プロジェクトを支援します。
シャーガス病は世界中で7,500万人以上が感染リスクにさらされており、毎年推定3万人が新たに発症し、1万2千人が死亡しています。南北アメリカ大陸の21カ国で流行しており、北米、ヨーロッパ、日本、オーストラリアにも罹患者がいます。
DNDiについて
Drugs for Neglected Diseases initiative(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ:DNDi)は、顧みられない人びとのために、安全で効果的、かつ安価な治療薬・治療法を発見、開発し、提供する非営利の研究開発組織です。DNDiは、アフリカ睡眠病 (別名ヒト・アフリカ・トリパノソーマ症)、リーシュマニア症、シャーガス病、河川盲目症(別名オンコセルカ症)、マイセトーマ(菌腫)、デング熱、小児HIV、 HIV患者の重症日和見感染症 、クリプトコッカス髄膜炎、C型肝炎に対する医薬品を開発しています。また、子供の健康、ジェンダー平等、性差の考慮、気候変動の影響を受ける病気などを研究開発上の優先事項としています。2003年の設立以来、DNDiは世界中の産官学パートナーと協力し、12種類の新しい治療薬・治療法を提供し、数百万人の命を救ってきました。www.dndi.org | www.dndijapan.org
【本プレスリリースに関するお問い合わせ】
DNDi Japan 広報担当 野田 葉子
ynoda@dndi.org/ 電話: 070-4465-5453