
東京発 – 国際的な非営利の研究開発組織であるDNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative顧みられない病気のための新薬開発イニシアチブ)の創設者兼最高責任者であるベルナール・ペクール医師が、長年に渡る世界中の顧みられない病気のための研究促進の業績が評価され、2020年のタイ・プリンスマヒドン賞を受賞したことをお知らせいたします。
プリンスマヒドン賞財団は毎年、医学と国際保健の分野における卓越した業績を有する個人、組織を顕彰しています。 これまでの受賞者には、アンソニー・ファウチ博士(米国)、バリー J.マーシャル教授(オーストラリア)、ハラルド・ツア・ハウゼン教授(ドイツ)、大村智博士(日本)、屠 呦呦教授(中国)が含まれます。
「この度、プリンスマヒドン賞の受賞者リストに加えていただいたことを、非常に光栄に思います。」とペクール医師は述べています。「この賞は、35年前にタイの難民キャンプでキャリアを始めた私にとって特別な意味を持っています。そこで初めて医療から取り残された人々の現実を目のあたりにしたことが、私たちをDNDiの設立へと導いたのです。」
ペクール医師は、2003年の設立以来DNDiを牽引しています。1999年、医療・人道援助組織である国境なき医師団(MSF)が受賞したノーベル平和賞の賞金の一部を、何億人もの顧みられない患者のための、革新的で新たな非営利の治療開発に取り組む団体の設立に当てました。こうしてDNDiが誕生し、MSF、世界保健機関(WHO)、およびマレーシア保健省を含む5つの国際的な公衆衛生機関がその創設パートナーとなりました。
「貧富にかかわらず、すべての人々の健康を優先するというペクール医師の揺るぎない意志はプリンスマヒドン賞の受賞に十分に値するものです」とマレーシア保健局長およびDNDi理事のタン・スリ・ヌール・ヒシャム・アブドラ博士は述べています。「マレーシアでの緊密な協力関係は、彼の取り組みの成果の好例といえるでしょう。DNDiと保健省により、マレーシアでは手頃な価格のC型肝炎治療により多くの人々がアクセスできるという、素晴らしい進歩を遂げています。」
ペクール医師のリーダーシップの下、DNDiはこれまでにリーシュマニア症、アフリカ睡眠病、シャーガス病といった世界で最も顧みられない病気や、マラリア、小児HIVの患者に、8つの新しい治療を提供してきました。DNDi は世界中の何百もの公的および民間組織と協力し、上記の疾患ならびに河川盲目症、マイセトーマ、およびC型肝炎を対象とした、創薬、臨床研究、治療へのアクセスに及ぶ強固な研究開発ポートフォリオを構築してきました。 また2016年には、WHOとともに、GARDP(Global Antibiotic Research and Development Partnershipグローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ)を立ち上げました。GARDPは現在独立した非営利財団として、健康に最大の脅威をもたらす薬剤耐性菌感染症と戦うための新規治療薬の開発に取り組んでいます。
ペクール医師は、そのキャリアの多くを医薬品アクセスのアドボカシー活動、そして利益ではなく患者の医療ニーズを重視した、新たな研究開発モデルの確立に専念してきました。1983年にMSFの医師としてキャリアを開始し、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアの数多くのフィールドミッションに参加しました。 1988年には疫学を専門とするMSF関連のNGOであるエピセンター(Epicentre)を共同設立しました。1991年にMSFフランスのゼネラルディレクターに就任し、1998年から2003年までMSF必須医薬品キャンペーンの創設ディレクターを務めました。
「ペクール医師は、特にパートナーシップと協働を通じて、低中所得国が自国の健康課題に対して自ら解決策を構築できると確信しています。」と、DNDi Japan理事長および北里大学名誉教授の山田陽城教授は述べています。「プリンスマヒドン賞はアジアのノーベル賞とも呼ばれ、過去には大村智博士、そして今回のペクール医師という2人のリーダーの素晴らしい業績と受賞を目の当たりにできたことを大変嬉しく思います。この受賞が、アジア地域および世界が直面している顧みられない熱帯病、C型肝炎、薬剤耐性(AMR)、デング熱、およびその他の主要な公衆衛生上の課題に取り組む私たちの取り組みを後押しし、重要なパートナーシップの強化に貢献してくれると信じています。」
新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)のため、本年の受賞者は2022年にタイで行われる授賞式に正式招待されます。受賞者による受賞講演は近々オンラインにて開催される予定です。
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以上
DNDiについて
Drugs for Neglected Diseases initiative (DNDi) は、患者のニーズに基づき治療開発に取り組む、非営利の研究開発組織です。顧みられない病気の中でも特に、シャーガス病、リーシュマニア症、アフリカ睡眠病(ヒトアフリカトリパノソーマ症)、フィラリア感染症(河川盲目症)、マイセトーマ(菌腫)、および小児HIV、C型肝炎を対象に、脆弱な環境で暮らす多くの患者に、安全で有効で、入手可能な治療を届けることを目指しています。またDNDiが構築したネットワークを活かし、医療資源の乏しい国々で緊急に必要とされている、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の研究を加速させる取り組みも進めています。 詳細は、www.dndi.org をご覧ください。
プリンスマヒドン賞財団について
プリンスマヒドン賞財団は、1992年1月1日、ソンクラ・マヒドン王子の生誕100周年を記念して、シリラジ病院医学部の提案により、プミポン・アドゥンヤデート・タイ国王の認可のもと設立されました。 同財団は、「タイの現代医学と公衆衛生の父」であるマヒドン王子の(模範的な)貢献に敬意を表して設立されました。
<報道関係問い合わせ先> 特定非営利活動法人DNDi Japan 中谷 香 Tel: 03 6258 0303 knakatani@dndi.org
Photo credit: FBBVA
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