[2015 年11月5日]
2015年10月17日(土)、長崎大学でサテライトシンポジウム「世界のフィラリア対策と日本の貢献」が開催され、弊団体 事務局長の平林が「フィラリア症対策を補強するDNDiの医薬品開発」について発表しました。
はじめに一盛 和世 長崎大学熱帯医学研究所客員教授、兼長崎フィラリア症LF-NTDセンターディレクターより、科学・政策・実施を担う各ステークホルダーの役割が有機的につながることによって世界規模での疾患制圧が達成できることが述べられました。その実践例として多田 功 九州大学名誉教授が、かつて日本がリンパ系フィラリア症を防圧し、世界的な対策への礎を築いた経験をご説明されました。つづいて現在の世界フィラリア症対策の動向について科学・政策・実施の各方面より発表がありました。矢島 綾 WHO西太平洋地域事務所専門官より政策としてWHO主導のもとに流行各国が実施している制圧プログラムの枠組みと進捗を、Dr. Patricia Graves、James Cook大学Senior Principal Research Fellowより政策を実施につなげる取り組みとして制圧目前となっている大洋州地域のプログラムの成果と課題を、上田 直子 JICA青年海外協力隊事務局課長より実施を支える草の根の活動として流行国における青年海外協力隊の取り組みを、伊藤 誠 愛知医科大学教授より政策につなげるエビデンスをつくる科学としてフィラリア診断方法の研究成果について発表がありました。
弊団体は平林がはじめに官民のパートナーとの連携によるDNDiの医薬品開発モデルについて述べ、フィラリア症 のための研究開発プロジェクトを紹介しました。DNDiでは現在のフィラリア症対策のギャップを埋めることでフィラリア症制圧に貢献するため、アステラス製薬が創製しBayer HealthCareが動物用に開発した駆虫薬であるemodepsideを用いた医薬品の開発に取り組んでおり、間もなくフェーズI 臨床試験が開始される予定です。聴講していた研究者の方々や発表者の関心も高く、活発な議論を繰り広げることができました。
DNDiの研究開発について説明する平林
異なる地理的背景、歴史、文化、宗教などを有する流行各国がフィラリア症の制圧達成という目標にたどり着くため、各ステークホルダーがそれぞれの役割にコミットし、連携していくことの重要性を聴講者に印象付けられたことと思います。DNDiは科学的なエビデンスにもとづき新たな医薬品というツールを開発することで、政策・実施を補強していけるよう今後も取り組んでまいります。
報告者:特定非営利活動法人DNDi Japan 森岡
※長崎フィラリアNTD室 ウェブサイト http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/lf-ntd/index.html
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