ヒトアフリカトリパノソーマ症(HAT)もしくは睡眠病に対する新しい治療法、ニフルチモックスとエフロルニチンの併用療法“NECT”が過去25年で初 めて、使用可能になりました。同疾病の感染国は世界保健機関(WHO)を通じて、新しい併用療法に使用する医薬品と備品のキットを注文するプロセスに着手 しています。DNDi(顧みられない病気のためのイニシアティブ)とそのパートナーによって開発されたNECTは治療費を半減するだけでなく、医療従事者 の負担を大幅に軽減します。NECTに関する発表は本日、ウガンダの首都カンパラにおいて、「トリパノソーマ症研究・抑制のための国際科学会議 (ISCTRC)」によって行われました。
ravuconazoleはエーザイが創製した抗真菌剤であり、in vitro および in vivo において、シャーガス病の病原体に対して強力な活性を有することが認められています。今回の契約締結により、DNDiはシャーガス病の蔓延地域において自 らの責任でE1224(ravuconazoleのプロドラッグ)の臨床開発を行い、その有効性および安全性を検証します。一方、エーザイはDNDiに対 し、臨床開発に関する科学的専門知識ならびに臨床試験用に必要な製剤を提供します。また、エーザイはDNDiの事業化パートナーとして、本剤の製造、承認 申請・登録、および本疾患の蔓延地域においてパブリックセクターを通じて本剤を安価で提供することの選択権を有しています。
DNDiのエ グゼクティブ・ディレクターであるベルナール・ぺクールは、「ネグレクテッド・ディジーズ(顧みられない病気)に対する、革新的で安全性に優れ、安価で有 効性の高い治療薬を開発することを目的としてDNDiが2003年に設立されて以来、今回初めて日本の製薬企業と提携し、最も必要としている人々に革新を もたらす医薬品を提供することをめざします。今回の提携は、患者さんと本疾患の治療に携わる医療従事者に希望を与えるものとなるでしょう」と述べていま す。
エーザイの社長兼最高経営責任者である内藤晴夫は、「当社は、DNDiと革新的かつ協力的な製品開発提携を結び、両者で顧みられない 病気に苦しむ患者様のアンメット・メディカル・ニーズを充足することを非常に喜ばしく思います。数百万人のシャーガス病患者様の窮状に鑑み、エーザイでは 新しく有効でかつ安価な治療の選択肢を患者様に提供することを追求して参ります。今回のDNDiとの提携は、患者様とそのご家族のアンメット・メディカ ル・ニーズを充足し、ベネフィット向上に貢献するという当社のヒューマン・ヘルスケア(hhc)ミッションを更に具現化するものであります」と述べていま す。
参考資料
シャーガス病はサシガメ(ビンチューカ)の咬傷 によって感染する疾患で、特にラテンアメリカやカリブ諸国の貧困地域における公衆衛生上の問題となっています。約8百万人が感染¹していると推定され、も し治療しないまま放置すると、感染者の約3分の1が重篤な心疾患もしくは消化器疾患を発症して死に至ることもあります。既存の2つのシャーガス病治療薬は 数十年前に発見されたものであり、慢性期における効果は限定的で、成人感染者における忍容性も良いとは言えません。その意味では、特に成人の慢性期に有効 な治療薬が開発されれば大きな進展であると言えます。